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Magazine MIDI Archive

#40 「ロンサムストリングスの映画音楽 」 11/9リリース


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ロンサム・ストリングスの最新作はカバーアルバム、それも映画のサウンドトラック。と聞いて驚いたけれど、並んでいる曲目を見て余りにもこの人たちらしすぎて笑ってしまった。
本来、映像と切り離せない/映像の印象に伴うことが「オリジナル・サウンドトラック」の前提だろうが、ここに並んだタイトルの多くは、映画本編を見た人が余り多いとはいえない、映画とは別個の一つの「作品集」として知られているアルバムばかりだからだ。
多くの聞き手にとっては「架空のサントラ」のようなものとさえ、言えるかもしれない。そのカバーものである。映像からどこまで自由に離れて映像を見せられるのか。そんな試みに思えてくる。

アルバムの冒頭を飾るのは、「泳ぐひと」で知られるフランク・ペリー監督の69年公開の「去年の夏」から「メインテーマ」。ジョン・サイモンが作曲し、ザ・バンドのレヴォン・ヘルム、ガース・ハドスンが参加している(が、契約の関係でレコードにクレジットはない)。
夏は日光の明るさに反して憂鬱なものでもある、ということを哀感とともに伝えてくるこの曲。ロンサムの録音からもそんな光景が浮かび上がる。
原曲は細かく振動するキーボードやマンドリンが不思議な感触とともに、どこか波打ち際を思わせる空気を伝えてくるが、ここには武蔵野の郊外の蒸し暑い夏の夕暮れのような鄙びた空気が加味されている。やはりやるせなく、切ない。

サム・ペキンパーの「ビリー・ザ・キッド 21才の生涯」の音楽を担当したのはボブ・ディラン。カントリーに傾倒していた時期であり、彼にしては異例のインスト曲も含まれているが、ディラン屈指の有名曲である「天国の扉」が入っていることで知られるアルバムだ。
ロンサムは、その名曲をモチーフにしたインストなどを中心に再構成。注意深く並べ替えられた曲順がまた違った光景を伝えてくる。ペキンパーは負ける男たちの「負けざま」をロマンティックに描いてきた。血なまぐさい映像以上に心に残る、鼻の奥が痛くなるほどの叙情。ディラン以上にペキンパーの侠気が染み渡ってくるような、瑞々しい演奏だ。

「白夜の幻想」の原題は「Trip」。ジャック・ニコルソンが脚本で主演はピーター・フォンダという、「本当にトリップしていた」人たちが参加した作品だが、「若い衆がLSDっちゅうもんでぶっ飛んでいるらしい」くらいの予備知識で作ったと思われる、流行り物に最速で飛びつく乱暴で下世話なロジャー・コーマン節が炸裂している。
「風俗音楽」的な意味で起用されたと思われるエレクトリック・フラッグによる音楽は、ブルースロックをサイケでぶっ飛ばし「トリップ」した曲の印象が強い。しかしロンサムが選んできたのは「飛んだその後」の無常観とか脱力感を感じさせる曲ばかり。今までのロンサムの作品の雰囲気に近いのはこのパートかもしれない。

マイルス・デイヴィスの「ジャック・ジョンソン」は、ロック的な勢いを注入したジャム・セッションを、鬼才テオ・マセロの冴えた鋏仕事で組み立てた片面1曲づつの52分2本勝負のアルバムだ。伝説的な同名ボクサーの生涯を描いたドキュメンタリー映画のサントラだが、シーンが想定されて書かれているとも思えないし、長尺曲2つという形式からしてもサントラであることを知らないで聞いている人が多いかもしれない。しかし、デイヴィスのキャリアの中で最もロックに接近した演奏の質感がストレートな闘争心を伝えてくる。通常のデイヴィスの「怒り」は、もっとややこしくてドロドロしているものだ。
アレンジはなかなかヘソが曲がっている。このアルバムと言えば、立ち上げた瞬間にマイケル・ヘンダーソンのベースギターとジョン・マクラフリンのエレキギターがうなりを上げてくる…はずなのに、この演奏は妙にもぞもぞと始まるのだった。本来はB面にあたる渋い「イェスター・ナウ」が、A面のロック/ファンク風味の「ライト・オフ」を挟む構成になっている。新たに起承転結を描くように組まれたこの音楽は、反骨の男ジョンソンの人生をこれだけで語り直すような説得力がある。
ロンサムにはピアノの即興演奏である原曲を4つの楽器に振り分けて見事に原曲の世界を描き出したキース・ジャレットの「ケルン・コンサート」という名演がある。この曲はそれに連なる試みで、驚くべき成果を生んだ。原曲からは想像できないバンジョーの音の置き所に感動し、ジミ・ヘンドリックスを意識したような音色のデイヴィスのトランペットがデイヴィスのトランペットのような音色のギターに還元されている。演奏は圧巻であろう。

「欲望」ではハービー・ハンコックやヤードバーズを引っ張り出してスウィンギン・ロンドンを描き、ピンク・フロイドらの音楽を使って「砂丘」を作ったミケランジェロ・アントニオーニは、前衛と言われながら実はミーハーな流行り物好きだったんじゃないか、という気もする(少なくともあの時期は)。
まるでピンク・フロイドが全ての音楽を制作したかのような扱われかたをする「砂丘」だが、フロイドは3曲のみで、ジェリー・ガルシアやジョン・フェイフィが提供した楽曲が殆どを占めている。フロイドのニック・メイソンによると、発注の経緯や劇中での使われ方に大層憤慨しているらしい。
このアルバムでは唯一、複数の作者の曲を組み合わせた仕立てになっている。カントリー色でまとめたこの演奏だけを聴くと、「なにやら深刻で落ち着かない」映画本編のシーンを微塵も想像できないのではないか。

アルバムの最後は、桜井芳樹氏の手によるドラマ「裏切りの街」のメインテーマ。
最近の映画はエンドクレジットが長く、勇壮なテーマ曲の次にしみじみした曲が後をつなぐことが多いが、この曲もそんな役割を思わせる。
奇しくも70年前後の男臭い曲が選ばれたアルバムにふさわしい、渋い余韻である。

佐藤八十八


 

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LONESOME STRINGS「ロンサムストリングスの映画音楽」

MDCL-1554
¥3000(税抜価格)+税


【収録曲】
1.Last Summer Theme
「去年の夏」(監督:フランク・ペリー)より

2.River Theme~Cantina Theme
3.Main Title Theme
4.Turkey Chase
5.Final Theme
「ビリー・ザ・キッド 21才の生涯」(監督:サム・ペキンパー)より

6.M-23
7.Peter's Trip
8.Synesthesia
9.Green and Gold
「白昼の幻想」(監督:ロジャー・コーマン)より

10.Yesternow
11.Right Off
12.Right Off [part.2]
13.Yesternow [part.2]
「ジャック・ジョンソン」(監督:ウィリアム・カイトン)より

14.Unknown Song
15.I Wish I Was a Single Girl Again
16.Love Scene
17.Dance of Death~Love Scene [part.2]
「砂丘」(監督:ミケランジェロ・アントニオーニ)より

18.裏切りの街 メインテーマ
「裏切りの街」(監督:三浦大輔)より



 

ロンサム・ストリングス 全オリジナルアルバムダウンロード配信開始

ニューアルバム『ロンサムストリングスの映画音楽』のリリースを記念して、これまでミディから発売されたロンサム・ストリングスのアルバム7タイトルのダウンロード配信がスタートします。また、ロンサム・ストリングスが中村まりをボーカルに迎えて制作したアルバム2タイトルも同時に配信されます。
 

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【配信アルバム一覧】


LONESOME STRINGS

『vol.1 new high lonesome sound』2000年

『vol.2 new lost city ramblers』2003年

『CANDELA』2006年

『BLOSSOM』2009年

『Some Happy Day LIVE PERFORMANCE ARCHIVES Vol.1(2004-2009)』2009年

『Document 20110909 Live Performance Archives vol.2』2015年

『ロンサムストリングスの映画音楽』2016年


LONESOME STRINGS and Mari Nakamura

『Folklore Session』2011年

『Afterthoughts』2012年


[配信ストア]
・iTunes Store
・Google Play Music
・music.jp STORE
・oricon
・レコチョク

[配信形態]
ダウンロードのみ



 

<関連リンク>

Lonesome Strings ホームページ
http://www.lonesomestrings.com/

Lonesome Stringsアーティストページ
http://midiinc.com/cgi/contents/commodity.php?a=31

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