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金 大偉「マンチュリア サマン」

金 大偉が描く満洲族の民族歌や神歌を現代風に融合された最新音楽スタイル世界初完成! 映画『ロスト マンチュリア サマン』のテーマ曲など収録。


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満洲音楽制作について

 私は2007年より、中国東北の満洲地域を訪問し、自分のルーツでもある満洲族の民族音楽を調査して、新しくアレンジする音楽を作ろうと考えた。その前に数年をかけて中国南方にある納西族の民族音楽を自分の感性で新しく構築した3枚のCDを制作していた。
 今度はいよいよ自民族のアイデンティティーと共に、ついに満洲族の民族の歌と現代風の音楽手法とを融合して、この新しいCD制作の企画をスタートしたが、しかし、思いもよらぬ大変な事態を知ることになったのである。とても残念なことに、約1200万人以上いる満洲族は、満洲語がほとんど話せないのが現状であった。伝統の歌を歌える人もいないし、満洲族の信仰であるシャーマニズムにおける神に捧げる歌―神歌もできる人はわずか数人しかいなかった。3年間の中、東北のエリアを数回旅して、ようやく満洲族の伝統的シャーマンの儀式と出会い、わずかの神歌を聴くことができた。この厳しい状況の中で、様々な驚きと哀しみが同時に私の中に共存したのである。
 満洲族とは、中国東北の狩猟民族であり、前身は女真族である騎馬民族で、いわゆる森の民であると言える。中国における最後の王朝である清帝国を築き、268年間をかけて、中国全土を支配したのである。この間、巨大な漢民族文化を受け入れ、満漢文化の融合によって、ついに自民族の文化が薄れて、現在では信仰である薩満教(シャーマン教)の儀式文化や満洲語がほとんど失われ、とても復活できるような状態ではないと思える。
 そこで、私はついに決心した。この現状を撮影し、『ロスト マンチュリア サマン』というドキュメンタリー映画を7年間にかけて作った。2016年に公開し、その中に、この満洲族の現状を描いた。自らの風習や信仰がなくなり、言語も消えてゆく……。これは一つの民族の存在末期と言えないのか?言語と信仰は民族の精神であり、根源的な魂であるといえよう。現在は、これらを私なりの構成によって、その続編を映像で記録しているのである。
 そして、この10年間の中で、私が出会ったわずかな残存している満洲族の祈りへの「神歌」をいくつか収録した。それを元にして、私なりの感性で新しく作曲や構成をし、今回のCDとなったのである。中には満洲語で歌われた祈りの歌を分解し、分割して、コラージュによって楽曲を構築し、日本人のミュージシャンたちをゲストに迎え、音楽によって調和した満洲族のエッセンスをたっぷり表現した一枚のCDとなった。さらに中国の最西北部のウイグル地域に住むシベ族(満洲語の原型を話すシベ語として、満洲族の姉妹民族の系列と考えられる)の歌も2曲収録した。この創作活動は、現地の体験を生かして、フィールドワークとしての自己調和を計り、最終的に自分の個性と固有の民族の文化との融合を可能にしなければならない。これが表現や創作の基本プロセスであり、私が大事にするスタイルの一つである。
 これらの満洲語の歌や音楽は、このような融合過程を経て完成し、民族の境界線を超えて、
言葉のジャンルを超えてゆくのであろう。このように、満洲語の神歌を現代風の音楽様式で統合されたスタイルは、恐らく世界初めての試みではないかと思う。
 このアルバムでは、映画で使用された主題歌や様々な楽曲が収録され、これらのすべては満洲族の大切なイメージであり、象徴的な精神性や魂を伝えるための大切な要素でもある。失われゆく民族が残す貴重なエネルギー、そして、その民族的なパワーから喚起される美しい光の結晶が見えてくるのであろう。

金 大偉(音楽家/映画監督)


 

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流浪の貴種のシャーマン

 金大偉とは、作家の石牟礼道子の縁で知り合い、やわらかで優美なたたずまいを、ひと目見て好きになった。アーティストとしての真摯な姿勢と作品に惹かれてしだいに仲良くなり、それから彼が満洲族の末裔であることをわたしは知った。アーティストを、そのたたずまいから好きになることは、本質的なことだとわたしは思っている。前知識なく、すでに生きられているアートを、その人に感じるということだから。
 金大偉は中国の「東北三省」、日本のメディア風に言えば「中国東北部」の遼寧省、撫順育ち。子供のときに、日本人である母の父親を頼って日本に来た。
 それは文化大革命の末期で、子供のときに観た映画といえばマルクスやレーニンが題材のものやチェコのものであったこと、聴いたのはクラシック音楽が主で、ショスタコーヴィチはあったけれどベートーヴェンはなかったこと、など……。つらい経験もあったと思うが、金大偉が語るとまるで映画の世界のようでわたしは魅せられた。しかしそれを映画のようにしか感じない自分の感性が不可解でもあった。満洲族と言えば、短い間だが日本が一度は手を結んだ民族なのである(それを言えば日本人は、同盟を組んだドイツのこともイタリアのことも、戦後思い出しもしなくて、なぜか敵国だったアメリカのことしか考えないのだが)。日本から、かの地に移民した人も多い。夢を求めて、あるいは国内で食い詰めて。大陸浪人、企業の勤め人、開拓民。戦争や病気や慣れない風土での無理、いろいろな理由で亡くなった方が多いし、命からがらの引き上げ劇もあった。けれど、それらも含め映画の世界のように感じてしまうほどに、今のわたしたちは満洲にファンタジーしか持っていない。
満洲を他人事のように思っている。これが、現代日本人の、ごく一般的な感覚であることもわかっていた。そのことが少しこわかった。 
 金大偉氏は、滅びゆく満洲のシャーマンの映画を撮っている。そのプロジェクトは現在進行形で、このCDはサウンドトラックである。今この地球上に、満洲語を話せる人は二十人くらいしかいない。
 全世界で二十人。それが彼の、自分でも知らなかった本当の母語―日本に来るまで満洲族で在ることを知らず、中国語をしゃべっていた―を話せる人口なのだ。一人亡くなると5%が消失するような世界。シャーマニズムにとって言語は「世界のはじめ」だ。世界のはじめにコトバがあった。音と意味とかたちが、まだ分かれる前の世界のコトバ。だとしたらそれが失われることは、世界にとっても、言語生成の秘密がひとつ、失われることである。気がついたときに、すでに故郷をたどるよすがが消えかけている。
 しかし彼は行動する。それがいつか本当に消えるものだとしても、ならばなお、自分が、末裔として少しでも残しておきたい。
 それは弔いであり、祝福であり、つまりはそのこと自体が、シャーマニズムの本質を示しているように思う。
 満洲はシャーマニズムを基盤とした文化である。だからこそ、日本が手を結べたのだということを、宗教学者に聞いたことがある。
 ふたつのシャーマニズム文化を流浪する貴種のようなアーティストが、今、シャーマニズムの本質を生きているのだ。
 満洲のシャーマンの歌とビートを聴いて感じるのは、まず、激しいドラムと、打ち鳴らされる鈴の音。
激しいドラムは原初的トランスには必須のものだ。
 聴いていて、ある衝撃にわたしは打たれる。故郷を喪失しているのは、彼だけではないのかもしれない。わたしの国からも何かが失われている。このビートはおそらく、わたしの母国、日本にも、かつてあって、失われたか、消されたものだ。日本がシャーマニズムの文化を持つなら。そうでないというなら、なぜ、今も祭祀王がいるのだろう?
 古い音楽を残すために、金大偉がとった方法は、そのままの保存ではなかった。それでは色あせた昔話になるにちがいない。彼の取った方法はこうだ―歌のトラックだけを録り、ビートやメロディ楽器の部分を、自らが作曲して、合わせた。その融合度合いがすばらしい。しなやかなハイブリッド。音楽自体を、ひとつの織物のようにして、切れた糸をつなぎながらひとつにすること。文化と文化をつなぐこと。それこそは、彼の願う、民族宥和の理念の体現だろう。

赤坂真理(作家)


 

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「現地の体験を生かして、自分の中で調和を計り、最終的に自分の個性と自己民族の文化の要素との融合を可能にしたい。」と金大偉が言う。約8年をかけて完成した映画『ロスト マンチュリア サマン』のテーマ曲やサントラなどを始め、中国北方満洲族のエッセンスを集約された数々の楽曲。また満洲の姉妹族であるシベ族の歌も2曲を収録されている。エレクトロニックの手法として結合された独自な音楽世界が展開され、パワフルな音空間の響きによって、異民族の文化の光の結晶がダイレクトに喚起される!
金大偉が描く満洲族の民族歌や神歌を現代風に融合された最新音楽スタイル

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マンチュリア サマン /金 大偉

MDCL-1561 ¥2,800 (税抜価格)+税 /[CD] /2018.10.24

01. マンチュリア サマン(映画「ロスト マンチュリア サマン」テーマ曲)
02. 聖なる踊り(映画「ロスト マンチュリア サマン」エンディングテーマ曲)
03. ホリセイ(招魂の歌)
04. 夜の天空
05. 送喜
06. ホスビエ ジョビエ(悪魔払い)
07. 魂の浮遊
08. 儀式の始め
09. 風と矢
10. 聖なる踊り(スペシャル ミックス)
11. 寒冬の夕焼け
12. マンチュリア サマン(スペシャル ミックス)
13. 天空のサマン

Total Time 61:41


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<関連リンク>

金 大偉 作品情報(試聴できます)
http://midiinc.com/cgi/contents/commodity.php?a=193

KIN TAII
http://www.kintaii.com/

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