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うたとギター
シンガー・ソングライターがギターを弾きながら一人っきりで歌っているアルバムを聴きながら…

夏休み特別編 クリス・クリストファーソン


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Kris Kristofferson - Live in Hultsfred 2004

今回は特別編です。夏ってことで、夏休み特別編。

いったい何が特別かというと、これ海賊盤、海賊音源なんです。いいのかな、そんなの紹介して(笑)ネットでみつけまして、聴きまして、おお、これぞ僕の考える一つの弾き語りの理想型だ!と思いまして、リスクをおかしても(笑)紹介したくなったわけです。

http://atruersound.blogspot.com/2009/08/kris-kristofferson-live-in-hultsfred.html

こちらのすばらしいブログの、「Kris Kristofferson - Live in Hultsfred 2004」と書いてあるところからダウンロードできます。違法と言わないまでも、非合法的な、まさにクリストファーソンさんらしく、アウトローな(笑)音源。自己責任でよろしくお願いします。(注、このクリストファーソンさんは、アウトロー・カントリーと言われるジャンルの主要メンバーです。保守的でない、無頼派カントリーって感じでしょうか)

こういう海賊音源ブログって、英語のは、おそらく米国だと思うんですけど、よく見かけますね。自分の海賊盤を作ってもぜんぜんかまわないと、むしろ奨励しているアーティストも多いせいでしょうか。奨励はしなくとも黙認していたり。逆に、自分の海賊音源は認めない、困る、という立場を表明するアーティストももちろんいて、そういう人のそういう音源はあまりなかったりします。ファンがアーティストの考えに合わせて、活発にやったり、自粛したりしてるんでしょうかね。日本だとアーティスト本意ではなく、レコード会社やJASRACが嫌な感じで脅しをかけたりしてますが。

嫌な感じというのはあれです、会社の利益を脅かすのでやめてくれ、というのが本当のところだと思うんですけど、アーティストを守るために、とかいう大義名分を使うのが、なんだか偽善的で嫌な感じという意味です。法を守るのは悪いことではもちろんありません。と同時に、法は絶対ではありません。時代とともに、緩やかに変わるものです。変えるのは人々の現実的な行い、つまり実情です。

話がそれました。

どういうところが理想と思ったかというと、聴いてもらえばわかるんですけど、ギターが下手(笑)。いや、うまくない。いっしょか。ちゃんとした言い方をすると、難しいことをまったくしてないんです。けどそれで、だからこそ、と言ったほうがいいのかな、十分に歌が伝わってくるんです。

初心者が覚えるいくつかのコードがあって、誰でも弾けそうなストロークがあって、簡単なアルペジオがあって、それなのに頻繁にとちったりしていて(笑)、これを、これこれこういう偉大な人なんだよとも言わずに、ライブの歓声なんかも入っていない素の状態で何にも知らない人に聴いてもらったらどう思うんだろう。反応はまっ二つに別れるんじゃないかな。良くも悪くも「渋いね」っていう人と、「何これ?素人のおっさん?」って反応と。前者は歌全体を聴いての感想、後者はミュージシャン的反応。音楽として聴いてしまう人ですね。

僕がフォーク(的なもの)って素晴らしいなあと思うのは、ちょこっとギターを覚えただけで誰でも自分の歌を歌えるっていうところにあります。音楽的に高度なテクニックや知識をマスターしなくとも自分が抱えている思いを表現できる。ひとりで簡単に感情を表現できる。だからこそフォークは嫌いだ、という人もたくさんいると思うんですけど、僕はそこが好きです。

クリストファーソンさんは、歌手よりも役者としての姿の方が、有名かもしれません。日本にはアメリカのこういったフォーク、カントリー系の情報や映像っていうのはあまり伝わってこないので、YouTubeとかで見るまでは、映画の中で、特に悪役としての姿の方が僕には馴染みがありました。役者としても有名だし、シンガー・ソングライターとしても偉大な人です。

自分はギターが下手だからサポートでもつけようかなあ、とか思えば簡単にサポートも付けられます。バンドでも。けれども、YouTubeなんかを見ても、この音源を聴いても近年は、あえて一人で、とちりながらも、堂々とギターを弾いて自分の歌を歌っています。

この音源、アルバムを聴いていてすごいなあと思ったのは、曲としてはまだ終わってないのに、歌い終わるとバサッとそこでギターを止めていたりすることです。エンディングを最後までちゃんとやらずに、すごい中途半端なところで放り出している。ふつう、音楽でこれはありえないですよね。むしろ音楽の演奏においては、途中はダレてもエンディングをきちんとしめれば拍手をたくさんもらえるということがある。

クリストファーソンさんはおそらく、大事なのは自分の声で自分の言葉を伝えること、うまい下手は関係ない、音楽的にどうこうなんて俺には関係ない、だからサポートもいらない、と、確信してやっているんじゃないでしょうか。

それがこれを一つの理想型であると、僕が考えるわけです。ギターの弾き方の基本を覚えれば、難しいことは何もせずとも、それだけで良い歌は歌えるのだ、ということをあらためて教えてもらいました。

<関連リンク>

A Truer Sound
http://atruersound.blogspot.com/2009/08/kris-kristofferson-live-in-hultsfred.html

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