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気晴らし日記

東京タワー


東京タワーを見上げ歩いていたら、このあいだ左側で線路に飛び込んだ人のことを思い出してしまった。ホームより一段下にある線路は空と似ている。
背中を押すものがないとき、一歩踏み出せば空の上、その前に話でも聞けたら良かったのか。背中を押してあげたら反射で戻ってきたかもしれないけれど、こちらが生きにくくなってしまうからやめておきたいし、側にいるとはわからない。
その後にできることはあらあらと言って線路を変えるだけ。こういうことにはじめて仕方ないと思った。

夜になって今度は色のついたのを見上げて立ち止まっていたら、車が待っていてくれた。可笑しな話だけれど、まあいいかと思っている一瞬があって、そういうときは事故や問題に巻き込まれない。見えていないだけかもしれないし巻き込んでしまってはいるにしろ。

翌日に同じところで電車を待っていても、悩みもしないし泣いてもいなかった。それどころかちゃんとわらっているし、毎日落ち着いている。
こんど線路で会ったら、東京タワーにでも行こうよと話しかけるつもり。

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