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2021.01.26

カーアクション、東京タワー階段踏破……激烈ロックデュオ、mojaのエクストリームなシングル&MVはいかにして生まれたのか

 

見出し画像

 

こんにちは、midizine編集部です。これまでに11ヶ国でライブを行い、SXSW TexasやFOCUS Walesなど世界の名だたるフェスで圧巻のステージを繰り広げてきた激烈ロックデュオmojaが、昨年の11月27日、2つのシングル「UP」と「Who’s Who」を同時リリースしました。

しかし、世界を舞台に活躍してきた彼らも、コロナ禍によってその活動の停止を余儀なくされています。彼らの魅力はなんといってもライブ。それができなってしまい、一体どうなるのかレーベルとしても気がかりでした。

そういった周囲の不安を一気に吹き飛ばすほどの痛快なシングルを突如リリースし、クリエイターShimura氏によるエクストリームなMVまで公開。その尽きることのないクリエイティビティと健在ぶりを示しました。

今回はmojaのメンバーHaruとMasumi、そして、バンドのアートディレクションを担当してきたShimura氏も交え、インタビューを行いました。コロナ禍でmojaは何を考え、今回のリリースに至ったのでしょうか。そして今後の展望とは?

ーーどういった経緯で今回の2シングル同時リリースに至ったのでしょうか。結構、前触れもなくリリースされた印象を受けてます

Haru「前触れがなかったわけではないんです。周りのバンドは配信(ライブ)なども始めていたので、『mojaはどうするのか』と考えていたのですが、結局、配信では自分たちの良さが伝わらないだろうという結論に至りました。

https://youtu.be/pQG0Gh9nMGs

だけど、決まっていた海外のフェスなども延期になっていたので、何をするべきか考え、曲を作ることにしました。閉じこもって作っていても仕方ないので、環境を変え、普段とは違うスタジオを使うことにしました。

普段は新曲をまずライブで試して、出来上がったらレコーディングというサイクルだったんですが、今回はそれも変えました。

いつも意図的に何らかのメッセージを反映させようとは思っていません。セッションや個人的なインスピレーションから生まれるんですが、今回のシングルにはコロナ禍でライブができないフラストレーションも込められていると思います」

ーー今回はジャムセッションから生まれたんですか?

Haru「『UP』はジャムですね」

Masumi「『Who’s Who』はHaruがベースのフレーズを作ってきて、そこから発展させていきました」

ーー「UP」は「気持ちを上げていく」というか、上昇する感じですし、基本的にはとてもポジティブな曲だと思いました

https://youtu.be/yQRZbDeqkeY

Masumi「そういうドラマチックな捉え方もあると思います(笑)」

Haru
「特に何の意図もないです」

Masumi「あれはベースがずっと上り調子なので、『UP』という曲名にしたんです。けど、応援ソングではないです(笑)」

Haru「『Shut up』とか『Get up』とか言ってますからね。意図はあまり無いのですが、政治に対して思うところがあるので、そういう気持ちが、深層心理的に反映されているとは思います。

『Who’s Who』にしても、メロディーと語呂先行で作ってますが、結果的には『言われてみれば』というか、タイムリーな言葉が出てきたと思います。『敏感で鈍感』ってずっと言ってるだけの箇所とかもあるんですよ」

Shimura「そんな事言ってたんですね!今回は日本語が多いですよね。あの掴めない感じがいいと思います」

ーーそうなんですね!よく聴いてみます。けど、面白いですよね。直感的に曲を作っているのに、いつもどこか意味深で、研ぎ澄まされたメッセージ性が含まれているように思います。それは2019年にMIDIからリリースされたアルバム『Be Quiet』にしてもそうです

https://open.spotify.com/embed/album/3yxnbzQ6ecpoMk9lfUR99I

Haru「そうですね。もっとダイレクトな歌詞を書くバンドもいるかもしれないですけど、mojaはあえて言わない感じですね」

ーーけど、その方が時代性や特定の価値観に左右されない普遍性のある作品になるという、考え方もできますね。MVもユーモアが効いていていいですよね

Haru「そうですね。今回のMVについていうと、『Who’s Who』についてはすでに自分らの方でアイディアがあり、ああいったものになったんですけど、『UP』はShimuraさんが曲の魅力をかなり引き出してくれたと思います」

Masumi「さっきHaruも言っていたように、配信ライブでは私たちの魅力は伝わらないので、その代わりになるような映像を作ろう、という話はもともとしていたんです。結果的にShimuraさんが入ってきて良かったですね」

ーーなるほど、確かに今回は映像と音楽の相乗効果がすごいですよね。「Who’s Who」ではマスミさんのドライビングテクニックが余すところなく披露されていて、見応え抜群なんですけど、意外にも「UP」が化けましたね。すごくコンセプチュアルでインパクトあります。東京タワーを登るというアイディアはShimuraのものですか?

Shimura
「あれは話の中から生まれたんですよね」

Haru「そうそう。東京タワーが実は階段で登れるという話になって。実際登っていく様子を撮影したわけですが、MVには自分たちの姿が全くなくて、登る必要あったのかなって(笑)」

画像1

Shimura「一瞬出てきますけどね…(笑)」

Haru「上に登ってから気づいたんですよ。自分たちが登っている姿を撮っていないことに。ひたすら登る映像になるということは分かっていたんですけど、間奏のところなんかはShimuraさんの編集力ですね。ラストのシーンとかも素晴らしいです。ちょっとしたショートムービーのようで、ピアノの音とも合ってますよね」

Shimura「ピアノが最初と最後に入っているので、そこは違う文脈の方がいいのかな、と思ったんですよね。曲じゃ無い箇所で少しストーリー性を出してみました」

Haru「今、コロナ禍でみんな家にいるので、世界に発信できるじゃないですか。東京タワーは日本のシンボルでもあるし、『from Japan』的な印象を与えられるのもいいですよね」

ーーそうですね。これがスカイツリーとか森ビルだと、なんだかしっくりこない感じはします

Shimura「そもそもスカイツリー階段で登ることになったら死にますよね(笑)」

Haru「東京タワーでも階段は約600段ありますからね。なかなか過酷なロケでしたよ。Shimuraさんもアートディレクターなのにめちゃくちゃ大変だったと思います」

Shimura「翌日筋肉痛になりました(笑)」

Haru「音を生み出すのはもちろん、MVの制作も大変なバンドだと思います」

ーーアートディレクターとはいえ、座ってパソコンと向き合っているだけではないんですね

Shimura「mojaのMVはリフとリズムに対して映像をいかにハメるか、を考えるのでやっていて感覚的で楽しいですね。歌詞に意味がありすぎるとそっちを意識しちゃいますし。

自分が普段やっている仕事はストーリーをしっかりと作らなければいけなくて、そこに時間がかかったりするんですけど、mojaのMV制作は感覚としてはジャムセッションに近いと思います」

Haru「良かったです。やっていることはシンプルなんですけど、その方が伝わることもあるんだなと思いました」

ーーそこまでお金をかけなくても、光るアイディア一つで面白いものが作れる好例ですよね

Haru「最近YouTubeで流行っている『THE FIRST TAKE』ってあるじゃないですか。あれは映像がとても綺麗ですし、一発録りの緊張感もあっていいんですけど、『ライブ感』とはまた違う気がしてしまうんですよね。どちらかというとMV寄りの印象です。

だとしたらライブに特化したバンドは、別の方法で表現した方がいいというのが自分たちの考えです。それが今回のMVで少し方向性が見えた気がします」

ーー話題が「UP」の方に偏ってしまいましたが、「Who’s Who」の撮影はどうでしたか?

https://youtu.be/cYMwPqj_wqA

Haru「もともと自分たちでやるつもりで、Masumiがこっそりやっているカーアクションを生かさない手はないと思っていました」

Masumi「もう公にしてます(笑)」

Haru「Masumiの知り合いのプロの人に頼もう、という話もあったのですが、それをやるといわゆるお金をかけたMVになってしまうと思ったんです。むしろアーティスト本人が運転している方が、さっきの話でも出てきた『ライブ感』が出せると思ったんです。完成度を追求した挙げ句、Masumiの車が壊れたんですが…(笑)」

Masumi「普段、自分で走っていてぶつけたこともないのに。すごくショックでした」

Haru「天気にも恵まれてラッキーだったとは思います。けどめちゃくちゃ寒かったですね…夜の撮影を断念しようとしたほどです」

Masumi「Shimuraさんと撮影に行った時、夜は6℃とかでした。東京は2桁あったのに」

Shimura
「僕はその日完全に服装を間違えました。買ってもらったセブンイレブンのネックウォーマーは今でも愛用しています(笑)」

ーーエクストリームなバンドなだけに、撮影もエクストリームですね。好き好んでやっているわけではなさそうなのに、アイディアが出てきて、結果的にハードな撮影になっちゃっている感じは面白いです

Haru「そうですね、結果的にそうなちゃった部分はあります。普通は役者とかスタッフが苦労するんですけど、mojaの場合はアーティスト本人が一番大変という。自虐的なバンドですよね(笑)」

ーー最近、ライブも再開されたと聞きました。今年の活動の計画や抱負を聞かせてください

Haru「緊急事態宣言が出て、ライブをやるかやらないかの判断はギリギリまで迷いました。そこでやってみた結果、『やって良かった』と感じています」

ーーどんなところに良さを感じましたか?

Masumi「臨場感ですかね。人が側にいるリアルさというか、その場にいないと体感できないものがあります。それができるのはやっぱりライブハウスですし、ライブが一番だと思いました」

ーー確かに、どんなに画質と音質が良くても、結局ライブって五感で感じ取るものですもんね。ライブハウス特有の匂いとか、キックが地響きのように感じ取れたり。観客が話してたり、そういうちょっとしたノイズも重要ですよね

Haru「あとはわざわざ足を運んで見に行くことも含めてライブなんですよね。家でいい音で見ても、途中でトイレに行ってしまったり、見るのをやめてしまったりして、結局くつろいでしまうと思うんです。

けどライブはそういう気軽な状況ではない。今回のMV制作にしてもそうですが、自分たちの体をわざわざ動かした方が充実感が得られるんです」

ーー今年はライブを増やしていくつもりですか?

Haru「できるところから増やしていきたいですね。ハイブハウスのガイドラインにはもちろん沿った形で。先日やったライブもマスクをつけてやったんですけど、これが意外にも面白かったんですよ」

ーーフェイスシールド的なやつではなく?

Haru「そうです。なので、死にそうになるんですよ。けど、それが新鮮だったんです。これなら飛沫を抑えながらライブできるな、と思いました。お客さんに関していうと、これまでのようにモッシュなどで大騒ぎはできませんが、その場の雰囲気とか音楽自体を体感してもらうのもアリなのではないかと」

ーーこんなご時世なので、モッシュとはさすがに無い感じでしたか?

Haru「モッシュすると怒られるらしいですよ。撮影してアップする人がいて、それを見た自粛警察たちの矛先がライブハウスに向かってしまうからです。よく来ているお客さんも、最初の頃はモッシュをしていたけど怒られたので控えた、と言っていました。なので、パンク系のバンドとかは大変みたいですね」

ーーなるほど。とはいえ、それもライブの醍醐味でしたしね。海外とかはまだ難しそうですか?

Haru「そうですね。行くにしても今は相当大変でしょうし。今年の秋に行われるウェールズ(イギリス)でのフェスへの出演が決まったままなんです」

Masumi「去年行われるはずだったのが、今年に延期されているんです」

Haru「しばらくは新曲を作って、MVも作れたら作って、というのを極めていった方が今は面白いかなと。それでライブも再開していくという」

ーースタジオに入る回数も減りましたか?

Haru「最初は減ったんですけど、以降はいつも通りに戻していますね。スタジオにもちゃんとガイドラインがあって、体温も測りますし、マスクも着用ですし。今のところ大丈夫です」

Shimura「新曲ではピアノを入れたり、ベースとドラム以外の音を使ったり、ミックスでも遊んでいますよね。その辺りは意図しているんですか?」

Haru「1回目のロックダウンが来た時、リモートで4曲くらい作ったんですよ。デジタルmojaということで、ベースの代わりにシンセを弾いて。ドラムもエレクトリックドラムで叩いて。当初は遊びだったんですけど、面白かったので、曲作りに取り入れることにしたんです。

今まではライブでも絶対できることをレコーディングしてきたんですけど、逆に曲を作ってから、それをどうライブで再現しようか工夫するのも面白いのかなと。全部2人でできることで曲を作っても飽きてきちゃいますし」

Shimura「デジタルmojaを広げていく可能性があるんですね」

Haru「そうですね。シンセだけとかやってみたいですね。テクノとかも好きですし。別のmojaとしてライブをやっても面白いですよね。Masumi次第ですが。『面白くない』と言われてしまったらそれまでなので(笑)」

moja
mojaはMasumi(dr)とHaru(ba,vo)から成る、東京ベースの激烈ロックデュオ。2007 年結成。同年、CMJへの出演権を獲得し、NY公演を行う。翌年2008年にはGlobal Battle of the Bandsの世界大会にて第3位。SXSW TexasやFOCUS WALESなど世界の名だたるフェスで圧巻のステージを繰り広げて きた。これまでに11ヶ国でライブを行い、国際的な評価も高い。阿修羅のようなMasumiのスーパードラミングに、Haruの地を這うような重低音ベースラインとアドレナリン全開のボーカリゼーションが重なることによって生み出される音塊は2ピースバンドとは思えないほどの大迫力。

Official Facebook page: https://www.facebook.com/moja-203061873063258
Twitter (HARU) : https://twitter.com/mojabass
HP: https://www.hello-moja.com/

Shimura
https://www.instagram.com/shimurakoga/